夏の里山 仙丈ヶ岳      2018.07.23~24
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灼熱の仙丈ヶ岳、大仙丈ヶ岳、小仙丈ヶ岳周回 -

毎年恒例の夏の日本アルプス登山のシーズンがやってきた。

昨年は雨ばかりでチャンスを逸してしまった。

今年は、大雨の後に極暑が続いている。

毎日記録更新の暑さだ。

私と言えば6月に体調を崩し、一ヶ月ほど山歩きから遠ざかっていた。

まだ体調は完璧とは言えない。

秋まで延期しようかと思ったが、行ける時に行かないと何時山歩きが出来なくなるかもしれない。

以前から気になっていた南アルプスに出掛けることにする。

しかし、南アルプスは名前からして暑そうだ。

南アルプスには標高の高い山が沢山あるが、アプローチが難しい。

比較的アプローチしやすい仙丈ヶ岳に行くことにする。



仙丈ヶ岳は初心者向け登山コースと言われていて、甲斐駒ケ岳とセットで登る人が多い。

しかし、今回は体調面から一座だけに登ることにする。

とすれば、甲斐駒ケ岳か仙丈ヶ岳の何方かだが、やはり3,000mを超えているということで仙丈ヶ岳に決める。

仙流荘に前泊して、しかも当日は仙丈小屋にも泊まってユッタリと登る事にする。

「南アルプスの女王」と言われているから登山道も緩やかかも。

なんとも軟弱な計画だが、今の私にはちょうどいいかも。

所が仙流荘を予約しようと思ったら既に満室。

伊那の羽広荘に泊まることにする。



日本酒の小瓶が6本も付く晩酌堪能コースでほろ酔いとなり熟睡。

羽広荘を朝6時に出発して仙流荘の駐車場に向かう。

朝食はおにぎり弁当にしてもらう。



7時5分 仙流荘着。

仙流荘の第二駐車場は半分くらいしか停まっていない。



臨時便は無くて、お握りを食べてバスを待つ。

8時5分のバスで出発。

北沢峠まで往復で2,680円。

同乗者は15名位。

今日は登山者が少ないのかな?

それとも殆どの人が、日帰りや二座登頂のために朝早い便で出発したのかもしれない。



林道沿いには白樺林そしてダケカンバの林となりカツラの林が続く。

窓の左には鋸山の険しい山容を眺めることが出来る。

真っ白に輝く甲斐駒の頂上も見えるが、撮影するのが間に合わない。



8時55分に大平山荘前で下車。

小屋の前を回り込んだ所に登山口が有る。

標高1,960m。



小屋の前から遠くに北アルプスの山々が見える。

尖った槍ヶ岳から左へと大キレット、そして北穂高岳や奥穂高岳まで見えている。



北沢峠から仙丈ケ岳へは、小仙丈岳を経由する尾根コースと最短コースの藪沢・重幸(じゅうこう)新道がある。

藪沢・重幸新道は大平山荘先代の尽力で整備された登山道で、沢に沿って登り、馬の背尾根を 経て仙丈ケ岳へと続く。

雪が多い登山路なので、例年なら7月中旬までは通行止めらしい。

今年は雪解けが早かったと聞いている。

屋外に水場と公衆トイレがある。

登山口に仙丈小屋が渇水しているので、十分な水を持って登るようにと書かれている。

例年8月の中旬に水が枯れることが有るとネットに書いてあるが、今年は水が枯れたのが早いようだ。

ただ此のコースは水の豊富な沢筋を通るので、途中で汲めば大丈夫。

登山届は昨夜のうちにCompassで提出してある。

GPSソフト『ジオグラフィカ』をセットするが、圏外で地図が表示されない。

仕舞った。

何時もなら事前に地図をダウンロードしておくのだが忘れていた。

GPSの軌跡なら記録することが出来るが、始めての登山道で地図が見えないのは少し不安。



大平山荘で降りたのは私達と男性一人だけ。

暫く緩やかな樹林帯を歩いて行く。



沢音が聞こえる快適な道だ。

こんな所にギンリョウソウ。



雪が多いせいか樹が横に生えているところを通過。

ハンノキだろうか。



鋸岳 榛木展望台着。

9時25分。

荒々しい鋸岳が目の前に見える。



やっと本格的な登山道となる。

木の根が多い。



ゴゼンタチバナが咲いている。

沢音が絶え間なく聞こえるが、沢は見えない。



花も少ない単調な登山路。

チダケサシが咲き始めていた。



ダイモンジソウが咲いている所を過ぎると樹林帯から抜け出す。



沢を渡る所に雪渓が少しばかり残っていた。

振り返ると鋸山が見えている。



男性が二人チェーンソウで流木を片付けていた。



タカネグンナイフウロが沢山咲いている。

もう花期が終わって萎んでいる花も多い。

沢沿いの緩やかな道を登って行く。



沢山のシナノオトギリやコオニユリが咲いている。



青いミソガワソウが咲いている。

馬の背を過ぎるところまで沢山咲いていた。

ホソバノヤマハハコも咲きはじめている。



バイケイソウも多いが花が緑色。

ミヤマバイケイソウと言うらしい。

黄色い花はミヤマアキノキリンソウか?



高度が上がると綺麗に咲いているタカネグンナイフウロが多い。

マルバダケブキが咲いている。

南アルプスでは、鹿害で他の植物が枯れた後に多く繁殖して困っているらしい。



振り返ると花崗岩が真っ白に輝いている甲斐駒ケ岳がそびえている。



クガイソウも多い。

ロープのある岩場を越えるがロープに頼ることはない。



轟々と水が流れる沢横の道を登って行くと、下山者に多く出会うようになる。

10時50分。

もう仙丈ヶ岳に登ってきた方たちだろうか。

イワアカバナも群生している。



冷たい沢水で顔を洗い、ペットボトルの水を入れ替えてゴクゴクと沢水を飲む。

一昨年、沢水で食中りをして一週間も寝込んだ。

此処の水は冷たくて勢いよく流れているから大丈夫だろう。

正真正銘「南アルプスの水」だ。

柔らかくてとても美味しい。

岩陰に咲いているのは?

北海道と南アルプスに咲くと言うマルバチャルメルソウかも。

それともクロクモソウだろうか。



キバナノコマノツメが群生している。

ミヤマシオガマは暑さのせいか少し元気がない。



太平洋側なのでハクサンオミナエシではなくてキンレイカだろう。

ハクサンフウロがちょうど見頃。



セリバシオガマとミヤマキンポウゲ



沢の中の岩に腰を掛けて休憩。

もう昼が近いので、残っていた朝食用のお握り弁当を食べる。

暑さの所為か、お握りが乾燥してカサカサになっている。

それでも大きいのを家内共々一個完食。

登山口で一緒に降りた男性がやって来て追い越していった。



大滝の頭との分岐に着く。

11時57分。

此処からは沢を離れて山道となる。



コオニユリとチシマギキョウ



ヒメコゴメグサが密かに咲いていた。



ミヤマバイケイソウとマルバダケブキが群生している。

鹿が食べないのでドンドン増えているようだ。



馬の背ヒュッテに着く。

12時13分

大勢が休憩している。

先程追い越していった男性も休憩していて、これから昼食にするそうだ。



ヒュッテの裏からは甲斐駒ケ岳がウラジロナナカマドの向こうに見えている。

ヒュッテの水汲み場には、沢の水が凄い勢いで流れている。

煮沸して飲むように書いてあるけれど、女性スタッフは何時もそのまま飲んでいるらしい。

私達は先程の沢で水を汲んでいるのでそのまま出発。



登山道脇には鹿害予防のNETが張り巡らされている。

鹿害は南アルプスでも深刻のようだ。

標高は2600mを越しているのに、こんなところまで鹿が繁殖していることに驚く。



ハクサンフウロとウサギギク



丹渓新道登山口への分岐が有る。

ダケカンバが捻じくれたように生えている。



マイヅルソウとツマトリソウ



気温が上がってきた。

標高2700mで26.1度とは。

平地では35度を超えていることだろう。

ムカゴトラノオもユニークな花だ。



ミヤマシオガマかな?

一の森のアカカンバに似ているが普通のダケカンバかな。



稜線に飛び出すと一気に視界が広がる。



正面に仙丈ヶ岳頂上と藪沢カールに仙丈小屋。

藪沢カールは、 立山の山崎カール、穂高岳の涸沢カールとともに、日本三大カールに数えられている。

2万年前頃の氷河が残した藪沢カールやモルーンは、後氷期の侵食をあまり受けておらず、良く残っている。

小屋の下の盛り上がっている所がモルーン。



ハイマツ帯を歩いていくとモミジカラマツ。



ミヤマバイケイソウやヨツバシオガマが花の盛り。

標高が上がるとまだ初夏の花が元気だ。



ハイマツ帯を抜けると直ぐ頭上に仙丈小屋が見えてくる。



チングルマやミヤマダイコンソウもまだ咲き残っている。



チングルマの綿毛が綺麗だ。

朝バスが一緒だった男性がもう降りてきた。

今日は甲斐駒の予定だったが、こんなに天気が良い日は仙丈ヶ岳が良いと言われて登ってきたらしい。

今日は北沢峠で泊まるとか。



千丈小屋の手前に湧き水の水場が有る。

チョロチョロとしか出ていないが、ペットボトルに入れて頭から被る。

頭がシャキーンとして生き返る。

ついでにゴクゴクと飲む。

水場から少し登ると小さなタンクが在り、水がドバドバと吹き溢れている。

水場が枯れているはずなのに変だなあ。

この原因は後から判明する。

千丈小屋到着。

13時49分。

登山口から4時間50分掛かった。

標準コースタイムは3時間半なので、随分とユックリ登ったものだ。

でも、誰にも追い抜かれなかったのになあ。



小屋の広場にも意外と人は少ない。

小型の発電用風車がズラッと並んでいる。

千丈小屋は1年ほど前に建て替えられてまだ新しい。



広場からは、目の前に甲斐駒ケ岳から鋸山への稜線が広がる。

その奥に、八ヶ岳の荒々しい山並みもくっきりと見えている。



千丈小屋にチェックイン。

2階に入り口が有る。



私達は3階に案内された。

3階へは、ロフトの引き下ろし梯子のような急階段を登る。

他の人は布団二枚に三人だったが、私達は布団一枚に二人だった。

家内が細いから良いが、男性二人だと一寸キツイだろう。



トイレは外に有り水洗になっている。

しかし、夜は電気が止まるので夜間用トイレが別にある。

2900mの高所だがポカポカと温かい。

とりあえず生ビール900円で甲斐駒に乾杯。



甲斐駒の頂上の花崗岩が真っ白に輝いている。

噂には聞いていたが、実際に間近に見ると凄い。

ジット見ている間に雲が湧いてきた。

五時から夕食。

ケチャップタップリのハンバーグが美味しい。

小屋のご主人狩野俊一さん(39)は登山口の、こもれび山荘で料理長をしていたが、公募で千丈小屋の管理人になったそうだ。



食堂に貼ってあった写真。

こんな景色を見たくて外に出る。



しかし、ガスがドンドン出てきて夕焼けはもう一つ。

ボンヤリ霞んだ景色を見ていると、小屋の若い女性と男性が話をしている。

男性は女性の叔父さんのようで、今日は頼まれて水場のポンプを修理に来たらしい。

ポンプの電磁弁が壊れていて、水を小屋まで上げることが出来なかったようだ。

直結してポンプが動くようになったので、お礼に生ビールを二杯ご馳走になったとか。

トイレに行くと手洗い用の水タンクに水が満タンになっていた。

大きなタンクに一杯になるのには暫く時間が掛かるだろうが、之で山小屋の皆さんは一安心のようだ。

部屋に帰っても消灯の8時までは、オバチャン達がマシンガントークで喧しい。

消灯と同時に寝入ったが1時過ぎに目が覚めて外のトイレへ。

いつの間にかスッカリ晴れて天の川が綺麗だ。

流れ星が次々と流れ、人工衛星の点滅する紅い灯りが斜めに横切っていく。

寒さも忘れて首が痛くなるほど見上げていた。

写真をとるが8秒しか長時間撮影ができないコンデジでは全く駄目。

撮影中のカップルに聞くと星空は30秒、天の川を綺麗に撮るには1分ぐらいの長時間露光が必要だとか。



朝4時過ぎから皆さんが次々と出発していく。

私達はユックリと5時に朝食を食べてから出発。



空は晴れているが、山並みは霞んでいる。



気温は12度。

とても高山の早朝の気温とは思えない。

今日も暑い一日となりそうだ。



仙丈ヶ岳に向けて出発。

5時35分。



振り返ると仙丈小屋。

チングルマの綿毛が朝日に輝いている。



ウサギギクが可愛く咲いている。

仙丈ヶ岳はウサギギクが多いのに驚く。



地蔵尾根への分岐

地蔵尾根は柏木集落の登山口(標高1150m)から登る長い長い登山路。

迂闊に登ると、一日で仙丈ヶ岳に到達することが出来ない場合もあるとか。



チシマギキョウやコケモモの花



チングルマの花と実



アオノツガザクラとチシマギキョウ



?の花。

岩場を登って行く。



タカネツメクサかな。



仙丈ヶ岳到着。

6時9分。

セメントに埋め込められた標高3032.88mの二等三角点「前岳」。



向こうに見えるのは北岳と間ノ岳。

山頂には手力男命、前獄三柱大神と刻まれた石碑等が沢山横たわっている。

仙丈ヶ岳は信州側からは甲斐駒ケ岳の前衛だったことから前嶽と呼ばれていた。

甲斐駒ケ岳と共に山岳信仰が盛んだったのだろう。




北岳の左に富士山が薄っすらと見えている。

遮るものが何もなく、360度の大パノラマで景色が眺められる。



甲斐駒ケ岳は影になっている。

眼の前にはこれから向かう大仙丈岳へと続く尾根。



昨日一緒に出発した男性に撮影して戴いてから大仙丈ヶ岳に向かう。



大仙丈ヶ岳に向かう仙塩尾根は、遥か塩見岳や北岳へと連なる長大な尾根だ。

コバノコゴメグサが可愛く咲いている。



ミネウスユキソウやイブキジャコウソウが一面に咲いている。

稜線は天空の花園のようだ。



イワツメクサやイワベンケイ



イワオウギの花も多い。



ウサギギクの群生とタカネコウリンカ



稜線に乗ると岩場となる。



イワベンケイとシコタンソウ



ちょっとスリルも味わうことができる稜線歩き。

左側は大千丈カールが広がる。



振り返ると仙丈ヶ岳。

大仙丈岳から男性が一人やって来た。

塩見岳まで縦走しようと思っていたが、あまりに遠くなので心が折れて引き返してきたそうだ。



大仙丈ヶ岳到着。

7時5分。



眼下には伊那の町が見える。



正面に北岳と間ノ岳

気温は既に22度越えている。



遠くに霞んでいるのは鳳凰三山のオベリスクかな。



そのうちに年配の男性がやって来て塩見岳まで縦走するという。

凄いなあ。

若い女性二人は此処で引き返すとのこと。

そのうち昨日ポンプを直した男性と小屋の女性がやって来た。

小屋の女性はこの山が好きでよく訪れるとのこと。



十分に景色を堪能してから仙丈ヶ岳に引き返す。



コケモモとタカネヒゴタイ



花を写していると家内はドンドン先に行ってしまう。

イワカガミは花が終わってる。



仙丈ヶ岳に帰ってくると山頂は凄い人混み。

もう登山口から登ってきたのだろうか。

今8時19分なので5時から登ると健脚なら登頂することができるのだろう。

仙丈小屋を見下ろしながら小仙丈ヶ岳に向かう。

高校生の団体が下っていくのを待って、違う高校生の団体が登ってくるのを待って大混雑。

そのうち年配の団体に取り囲まれる。

観念してのんびり下ることにする。



大きな歓声が聞こえてくる。

高校生の団体が登頂したらしい。

すると下山中の団体との間でエールの交換。



甲斐駒ケ岳や北岳を見ながら下って行く。



千丈小屋へ向かう分岐を通過。



左下に馬の背ヒュッテを眺めながら進むと小仙丈ヶ岳。

すごい渋滞。

右側は小千丈カール



岩場を登って行くと小仙丈ヶ岳山頂着。

9時35分。

後ろに仙丈ヶ岳。




暫く山頂で休憩して下山。

細かい砂礫状の道が続くので、転倒する人が多い。



気温が上がってきた。

なんと30度近くある。

影も風もないので鉄板焼き状態。

喉が渇いて水ばかり飲む。

藪沢ルートと異なり、水場はまったくない。



団体を何組も追い越してやっと樹林帯に入る。



樹林帯に入ると冷たい風が吹いて一気に涼しくなる。

五合目の手前で休憩。

あまりに気持ちが良くて暫く座り込む。

五合目では追い越していった高校生や大勢の人が休んでいる。



あとはひたすら下って行く。

皆さん疲れたのか、あれほど沢山いた登山者が後ろに全く見えなくなる。

キャンプ場への道を右に見て少し登り返してから下る。



平坦な遊歩道を下ると、こもれび山荘前に着く。



北沢峠着。

12時8分。

仙丈ヶ岳から3時間50分掛かっている。

昨日、仙丈小屋手前でお会いした男性が、もう甲斐駒から降りてきてバスを待っている。

28人揃ったところで臨時便が出た。

仙流荘まで帰って昨日も入った見晴らしの湯へ。

旅館で入湯券をもらっていたので無料。

しっかり温まって信州蕎麦を食べて一路自宅へ。

新名神の豪華な北宝塚パーキングで寿司やサンドイッチを購入。

喉が渇いてコーラを一気飲み。

10時過ぎには自宅に着いてネットを確認するとCompassから下山届がまだだとメールが有った。

大変だ。

下山時刻を7時間過ぎても下山届がないと、息子の所に連絡が行ってしまう。

時刻を見ると届けていた下山予定時刻の丁度7時間過ぎ。

急いで下山届を出し、息子に電話をしてもし連絡があっても大丈夫と伝える。

その後、羽広荘でもらった日本酒を飲んで寿司を食べて寝た。

夜中、体が火照って熱い。

顔も日焼けで突っ張っていた。

しかし朝起きると元気で、ボランティアへ出掛けることが出来た。

今回は軟弱登山だったが、はじめての南アルプスの山を堪能することが出来た。

これからも体力に合わせた山歩きを続けていきたいと思う。





総歩行距離 12.3km

累計標高差 ±1,569m


 


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