秋の里山  雲ノ平  2014/09/27
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 薬師沢  雲ノ平 祖母岳 -

そのⅠ 折立から太郎兵衛平

そのⅡ 薬師岳


ぐっすりと寝て5時前に起きる。

ペットボトルにスポーツ飲料の粉を入れて4本用意する。

薬師沢小屋には水が豊富なようなのでこのくらいで大丈夫だろう。

その後トイレに行く。

私は朝ご飯を食べてからトイレに行く習慣なので、早朝に朝ご飯を食べずに出発する時は特に注意している。

元々哺乳動物は食事をする事で胃を刺激し、便意を催し排便するように出来ている。

朝便意が無いからとトイレをせずに出発し、途中で朝ご飯を食べて歩くと突然便意におそわれて目を白黒することとなる。

出発前に太郎平小屋の受付の男性にこれからの予定を知らせる。

太郎平小屋がこの界隈のルートの登山届けを受付してくれる。

男性から、雲ノ平までの木道で事故が多発しているので気をつけるようにと言われる。

黒板を見ると木道で転倒して骨折した事故が10件程も掲示されている。

(7~8月の夏山シーズン中には日本医大の診療所が開設されている)

おまけに薬師沢からの登りはこの近辺では一番キツいしヌルヌル岩が多いので気をつけるようにとも言われる。

この時期の早朝は霜が降りるので特に危ないらしい。

詳しい地図を戴く。



5時40分 寒いのでダウンを着込んで出発。

雲が多いが、太陽が上がると晴れてくるだろう。



綺麗なトイレの横を太郎山に向かって進む。



途中で左へと薬師沢に向かう。

正面に特徴のある北ノ股岳2661mが聳えている。

この木道をまっすぐ行くと西銀座ダイヤモンドコースと呼ばれる槍ヶ岳への縦走路となる。



素晴らしい草紅葉に見とれながら木道を歩いて行く。

霜が降りているが木道には滑り止めが有り特に危険は感じない。



やがて壊れた階段のザレタ道を下って行く。

しばらく行くとまた木道の緩やかな道となる。



目の前にこれから向かう雲ノ平の溶岩台地と祖父岳が見える。

池塘が沢山ある。



ホソバノヤママハハコの花が咲いているが葉はすでに黄葉している。

クロマメノキの紅葉は赤紫色が濃い



水晶岳の左から日が昇ってきた。

あっという間に曇っていた空が青空に変わっていく。

紅葉が日に照らされて輝きだした。



北ノ股岳が一瞬赤く染まる。

石畳の道を下って行く。



男性が一人追い抜いて行った。

ダケカンバの黄色とナナカマドの赤色が青空に映えて綺麗だ。



鉄階段を降りていく。



急坂を下りきると標高2,082m小さな沢を渡る。

木橋は滑り止めのペイントがされているが慎重に進む。

これから先同じような沢を幾つか渡るが、増水時には通行不可と地図に書いてある。

一旦、木の根の張る歩きにくい道を上がる。



また木橋があるがその先の丸太を組んだ橋は撓んで揺れるし滑りそうで、すり足で進む。

また綺麗な草原に出る。



休憩所もあるが、今日はこの先どのくらい時間が掛かるか解らない休まずに進む。

道標が幾つかあるが距離が書いていない。

せっかく設置するのなら距離を書いてほしい。



大きな沢を渡る。

地図に第三徒渉点と書かれている所だろう。

標高2,028m

薬師沢から左俣が分岐している。

またしばらく登って行く。



嫌な崩壊地をトラバースしていく。



水芭蕉の大きな葉が黄色くなっている。



傾斜が緩やかに成り平原に出る。

カッパがすんでいると言われるカベッケガ原を過ぎると道が狭くなる。

ご夫婦が登って来た。

奥様はビックリする程の美人だった。

急坂となり沢の音が大きく聞こえるようになる。



8時13分 薬師沢小屋に着く。

出発から2時間33分

地図のコースタイムが2時間40分なのでコースタイム通りだ。

朝追い抜いて行った男性が入れ替わりに出発して行った。

広いテラスがある。

冷たいわき水が豊富にある。

コップで一息に二杯も飲んだ。

美味しい。

ペットボトルの水を補充する。

小屋で今晩の予約をしてザックをデポする。

すでに太郎平小屋から予約の連絡が入っていた。

薬師沢小屋は携帯の電波が届かない。

薬師沢小屋には太郎平小屋から無線で連絡する仕組みとなっている。

本当に秘境の小屋だ。



此所から雲ノ平までどのくらいの時間が掛かるかよくわからない。

地図で見ると行きが3時間40分で帰りが2時間40分。

合計6時間20分。

雲ノ平で40分くらいゆっくりしたら7時間。

今は8時28分。

コースタイム通りに歩くと15時30分には帰ってこれるはず。

しかしかなり厳しい道らしいので心配。

16時頃に帰ってきますと言って出発。



黒部湖から上流の黒部川の上の廊下と呼ばれる渓流にかかる薬師沢出合吊橋を渡る。

幅が30センチ程しか無くて踏み外しそうで怖い。



橋の下には黒部川がゴウゴウと流れている。

此所から下流が上の廊下そして上流が奥の廊下その先に赤木沢や五郎沢そして鷲羽岳の直下の黒部川源流へと続く。

橋を渡ると直ぐに垂直の赤い梯子で河原に降りる。

その先のパイプで出来た梯子を登りまた梯子を下りる。

よく見ると後の二つの橋は増水時用で普段は河原を巻いて行ける。



左へと行くと上の廊下経由で高天原へ行くことが出来る。

標識に急坂ガンバレと書いてある。

頑張らなくっちゃ。

右へと直登路を登る。



のっけから急坂。

ゆがんだ梯子を登る。



噂通り、ヌルヌルの岩がゴロゴロしている道を上る。

足の短くて股関節の硬い私は足を上げるのが大変。

ストックに頼るとツルッと滑る。



必死に登るが家内にどんどん離される。

家内を呼び止めて追いついたら動けない。

思わず座り込む。

登り始めてから1時間15分。

そう言えば朝ご飯を食べていない。

太郎平小屋のお弁当はお寿司。

堅くしまっていて食べ応えがある。

半分程食べて昼食用とする。



苦しい登りがやっと緩やかになってきた。

男性が一人降りてきて、こんな道を下りに使ったのは大失敗だった。

こんな大変な道は無いとブツブツ言いながら下って行った。

あのう、この下がもっと大変なんですけれど。



10時30分 やっと木道の端に辿り着いた。

2時間で急坂を登り切った。

と思った。

此所から一気に展望が開けると思ったが大違い。

まだ標高2,390m

更にジャングルのような中を進んでいく。

途中で右に曲がる所を間違って行き止まりと成り、堪らず倒木に座り込む。



やっと視界が開けて紅葉が綺麗な木道を進む。

10時59分 アラスカ庭園2,464mに着く。

出発から2時間30分。

コースタイムが2時間20分なので少し遅れた。

しかしキツイ道だった。

素晴らしい景色を写していると男性が一人追い越して行った。



左には薬師岳、正面には水晶岳が聳えている。



しかし雲ノ平山荘はまだまだ遠い。

しかもまだ緩やかだが登りが続く。



左に薬師岳が綺麗に見えるようになる。

足下にはクロマメノキ等の紅葉と笹が現れる。



右には北ノ俣岳2,621m、赤木岳2,622mそして黒部五郎岳(中ノ俣岳)2,840mへと続く。

大きなカールのある黒部五郎が一番美しく見えるのはこの雲ノ平だと言われている。



正面に紅葉の綺麗な丘が見えるが祖母岳(ばあだけ)2,555mだろうか。

その右に三俣蓮華岳2,841mが綺麗に見える。



よく見ると三俣蓮華岳の左に槍の穂先が覗いている。





雲ノ平は草原のような所かと思っていたがウラジロナナカマドやハイマツの低木樹林帯が続く。

色とりどりの紅葉が美しい

正面の水晶岳が益々大きくなってくる。



黒部五郎岳の東斜面の五郎カールがよく見えるようになる。



左には赤牛岳。

その左奥は立山だろうか。



雲ノ平には外国の名前が付いた庭園が多いがここは奥日本庭園と名付けられている。

正面に薬師岳の姿が美しい。



どんどんと木道を歩いて行くが周り360度どちらを見ても素晴らしい眺めに撮影が忙しい。

しかし見渡す限り誰も歩いていない。

私達だけがこの景色を楽しんでいると思うと不思議だ。



西銀座ダイヤモンドコースの緩やかな稜線が次には私達の所においでと呼んでいる。

あの山の向こうには登山者が溢れている事だろう。



ハイマツの間を歩き続けるとやがて下りとなり祖父岳に向かって木道が続く。

まだ雲ノ平山荘は見えてこない。

祖母岳を回り込んだ所に分岐が有りまっすぐ行くとアルプス庭園と書いてある。

帰りに寄ることにして左へと山荘を目指す。



突然、鬼押し出しのような溶岩地帯に出る。

溶岩の間にはチングルマの紅葉が広がっている。



やっと雲ノ平山荘が見えてきた。

長く続く木道をはやる気持ちを抑えながら草紅葉の輝く中を登って行く。





先ほど追い越して行った男性が山荘に向かわずにまっすぐと進んでいった。

このまままっすぐ行くと祖父岳そして途中に高天原への分岐があるようだ。

皆さんの話の中によく出てくる北アルプスの最秘境とはどんな所だろうか。

ランプの宿高天原山荘や露天風呂もあるようだ。

その先は夢の平。

此所から高天原山荘までコースタイムで2時間30分となっている。



雲ノ平山荘 11時44分 到着

薬師沢小屋から3時間16分程かかった。

コースタイムは3時間40分なので少し早く着くことが出来た。

山荘は2010年に新築されたばかり。

雲ノ平山荘は、水晶小屋や三俣山荘と同じく「黒部の山賊」で有名な伊藤庄一氏が最初に建設した。

現在は庄一さんの息子さんによって運営されているようだ。

今年になって「定本 黒部の山賊 アルプスの怪」が発刊された。

是非読んでみたくなった。

早速、アマゾンで注文しました。

届くのが楽しみです。

「黒部の山賊」の初版本も復刻版も表紙は、モンベルが引き継いだ「岳人」の表紙と同じく畦地梅太郎さんの版画だ。

http://www.atelier-u-web.com/gallary/yamaotoko_1960s.html



テラスからは正面に祖父岳。

右には三俣蓮華岳

左には岩苔乗越の向こうにワリモ岳の尖り。

そしてその左には水晶岳。

山荘に寄ってバッジを購入。

登山者は居なくてガランとしている。

カッパと熊のバッジを購入。

生ビールを買おうとしたら無いとの事。

仕方が無いので缶ビールとお茶を注文したら棚に並べているのを渡された。

あのう、冷たいのが欲しいですけれど..

と言うと、此でも十分冷えていますよと言う。

確かにヒンヤリとはしているけどビールは良く冷えていなければねえ..

ベンチでお弁当の残りと携帯食を食べてビールを飲んで裸足になって休憩。

常温のビールでも気温が低いせいかまずまず美味しく飲む事が出来た。

それにしても素晴らしい所だ。

日本にもこんな所があるんだ。

三嶺のゴールデンルートも素晴らしいが、雲ノ平はスケールがでかい。

見える山々もでかくて雄大だ。

それにしてもこんな素晴らしい天気に、私達夫婦以外には誰もやってこないのが不思議だ。

祖父岳方向を見ても人影は見えない。

やっと一人男性がやって来たが山荘のスタッフだった。

二人で存分に雲ノ平を満喫する。



気温は低いが雲一つ無い日本晴れ。

このままずっとこの場所で居たくなる。

それとも足を伸ばして高天原へと回ってみようか。

しかし、スマートフォンがまた圏外。

上司に休暇の連絡も出来ないし、薬師沢小屋に予約変更の連絡も出来ない。

12時14分 薬師沢小屋まで帰る事にする。

次回は三俣蓮華岳の方から時間に余裕を持って訪れたい。



チングルマの綿毛と紅葉が草紅葉の中で一際鮮やかだ。




アルプス庭園の分岐の所にザックがデポしてある。

私たちも行く事にする。

祖母岳の頂上部に庭園はあるようだ。

二人が素晴らしかったと降りてきた。



登るにつれて素晴らしい景色が広がる。

写真を撮りながら木道の端を踏んだら止め釘が外れていたのか、シーソーのようにガクンと下がった。

次の木道に踏み換えようとしたらハイマツの枝に足をとられて転倒した。

片手にカメラもう一方にストックを抱えていたため、手を突く事も出来ず顔面を木道に打ち付けた。

しばらく動けない程痛かったが、柔らかい木道だったので頬骨の所が腫れ上がっただけですんだ。



気を取り直して後ろを振り返り景色を見て一服。

水晶岳と赤牛岳が綺麗だ。

野口五郎岳は水晶岳の向こうだろうか。



木道を上りきると祖母岳頂上に着く。

ここがアルプス庭園と呼ばれているようだ。



雲ノ平山荘からは槍ヶ岳が見えなかったが此所からは槍の穂先が見える。



水晶岳をバックにした雲ノ平山荘。

何時またこの景色を見る事が出来るだろうか。



朝来た道をひたすら帰っていく。



途中、やま&きぬさんによく似たご夫婦に会った。

13時18分 アラスカ庭園通過。

その後、薬師岳の下りでお会いした四人程のパーティとキャンプ場でお会いしたご夫婦がやってきた。



ゴロゴロ道を滑らないように降りるのはキツイ。

青年二人と中年の男性が登って来た。

若い人は流石元気だが、中年の男性は汗びっしょりで「後どれぐらいで平原に出ますか?」

あと1時間ぐらいですよと言ったが、「余りにキツくて心が折れる」と言って登って行った。



それからも足がくがくの道を慎重に下る。

沢の音が大きくなりやっと薬師沢に着いた。

数人が長い竿で釣りをしている。

イワナを釣っているのだろう。



また梯子を下りて登って吊り橋を渡る。

今日、雲ノ平から薬師沢へ降りたのは朝のおじさんと私達だけだったようだ。

逆に雲ノ平に登って行ったのは(私達より早く出発した人が居たとしたら除いて)13人だった。

秋の最高のシーズンの快晴の土曜日にしては少ないなあ。



テラスでは大勢が早くも宴会中。

本を読んでのんびりしている女性も居る。



15時48分 薬師沢山荘に辿り着く。

何とか今日も16時前に着く事が出来た。

雲ノ平山荘から祖母岳を経由して3時間30分(地図のコースタイムは3時間10分)。

しかしアラスカ庭園から2時間30分かかっている。

アラスカ庭園からはコースタイムは1時間30分だが、私達は丁度登りと同じ時間掛かっている。

滑りやすい下りは苦手で時間が掛かるなあ。

早速冷たい湧き水を一気のみ。

美味しい。

チェックインしてとりあえずビールを購入してテラスで渓流を眺めながら至福の時を過ごす。

お聞きすると、殆どの人が沢歩きをして渓流釣りする方達だった。

若い夫婦が到着して大きなリュックから取り出したのは一升瓶の日本酒だった。

皆さん大量のお酒を担いできているようだ。

フロントでお聞きすると今日の宿泊は30人と多いらしい。

こんな事も偶にあると言っていた。



夕食は具たっぷりのお汁が美味しかった。

肉料理も美味しかった。

皆さん常連の人が多いようで話が盛り上がっていた。

山小屋のスタッフが、御嶽山に登った事がありますかと言うので、去年登って五の池山荘に泊まったと言うと

二の池山荘や五の池山荘は剣が峰からどの辺にあるんですか等と変な事を聞く。

簡単に説明するとそれ以上何も言わないのでそのまま寝た。

寝床は広く布団も快適だったが、窓の下で、沢の音がゴーゴーとしていてかなりうるさい。

おまけに蛍光灯が目の前でまぶしくて疲れているのに寝付けない。

消灯時間を過ぎても消えないのでトイレのついでに消すようにお願いするとテラスではまだ大勢が宴会をしていた。

ちょっとほかの山小屋とは雰囲気が違うようだ。

蛍光灯が消えてやっと眠りに落ちた。

今日はひょんなことで憧れの雲ノ平に行く事が出来た。

大満足。



そのⅠ 折立から太郎兵衛平

そのⅡ 薬師岳


そのⅣ 帰り



里山倶楽部四国編 

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