夏の里山 北アルプス 裏銀座縦走 Ⅰ     2015/07/20
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 高瀬ダム ~ ブナ立て尾根 ~  烏帽子岳 ~ 烏帽子小屋 -


  前夜 
 Ⅰ 烏帽子岳
 Ⅱ 水晶岳
 Ⅲ  双六岳
 Ⅳ 小池新道

朝4時までぐっすり寝て、朝食代わりのおにぎり弁当を受け取って出発。

昨日は天候が不安定だったが、今日は素晴らしい天気だ。

楽しい山歩きが期待出来る。



七倉山荘に駐車してタクシーに乗って高瀬ダムへ。

24日には、車が新穗高温泉の駐車場に届けられているか?少し不安を感じるが信じるしかない。

タクシーに相乗り者が居ることを期待していたが誰もおらず乗車料金は2,100円だった。

高瀬ダムはロックフィルダムとしては日本一高い。

全ダムを通じても、黒部ダムに次ぎ第2位。

また、堤体積は既設のダムの中では奈良俣ダムに次ぐ。

とにかく大きい揚水発電のダムだ。

6時10分出発

トンネル手前に展望台が有り、登ると槍ヶ岳の尖りが見えるらしいがパス



トンネルをくぐり不動沢の吊り橋を渡る。



砂地の中を歩いて行くと濁沢キャンプ場



このキャンプ場は烏帽子山荘が管理していて一人500円の使用料は烏帽子小屋にて支払うことになっているらしい。

と言うことは、このキャンプ場を利用した人は必ず烏帽子小屋まで登るシステムになっていると言うことかな。



この橋は今年出来たばかりのようだ。



塩田まゆ子さんの遭難碑がある。

1998年は8月中旬に集中豪雨があり、烏帽子小屋から下山した麗澤大学山の会のパーティーのうち、

二人が濁流に流され、一人が行方不明となった。

その一人が塩田まゆ子さんだ。

昨年は、右俣林道の滝谷出合で8月中旬、下山中の男女3人が増水した沢に流され、死亡する事故が起きた。

普段は水がない場所でも、北アルプスは岩盤が広がる所が多く、水を吸い込む場所がないので大雨時には一気に増水する。

夏は、普段豪雨発生のない山域でも大気は不安定で、大雷雨になりやすい。

予想天気図が集中豪雨型になったら、山には絶対に近づいてはならない。

今年も天候は不安定だが、今日から23日までは晴れの予報だ。



登山口 6時33分出発

これから日本3大急登の一つ、ブナ立て尾根を登ることになる。

烏帽子小屋(2,520m)まで標高差約1,220m 

燕岳の合戦尾根よりは少しキツイと言われている。

2011年に合戦尾根に登った時は、家から夜通し走って直ぐに登ったがそうキツイとは思わなかった。

今日は前泊をしているし何とかなるかな?



直ぐにパイプで作った階段道となる。

その後も急登が続く。



標高差100m毎にあるという標識の11番がある。

烏帽子小屋は0番

後、、標高差1100m

青い実はツバメオモトの実かな?



流石、ブナ立て尾根だ。

大きなブナの林が続く。

大きなザックを背負った男性がフラフラと歩いている。

「荷物は重いし、坂は急だし、体調不良で足が前に出ない」と嘆いていた。

頑張ってと励まして先に行くが、私達の足取りも重い。



ヤグルマソウが咲いている。

何時も大きな葉っぱばかり見ているが、花の咲いているのには余り出会わさない。

センジュガンピも満開だ。



サンカヨウも青い実になっている。

急な所にはロープがあるが雪の時でも使うのかな?



9番 「権太落とし」 7時27分 

54分で標高差300mを登ってきたことになる。

ちょっとペースが遅いがまあまあかな。

ソバナが沢山咲いていて心が和む。



まだ風邪が治っていないのか喉が痛い。トローチをなめながら登っていく。

タケシマランも赤い実となっている。



8番でご夫婦に追いついた。

千葉から来られたそうで、野口五郎から水晶岳そして黒部五郎岳を越えて太郎兵衛小屋から折立へ下りる予定だとか。

富山で美味しいお魚を食べるのが楽しみだと奥様が嬉しそうに言っていたのが印象に残った。

喉が痛く熱っぽい。

普段なら腰掛けて休まないのだが思わず座り込む。

こんな事で登り切ることが出来るのかな?



お二人に失礼して先に進む。

また7番でも休憩。

疲れが出てきたのか。



スダヤクシュが咲いている。

左にに唐沢岳・餓鬼岳が見える。



道は益々過酷になるが今の所快調。



ヤグルマソウが多くなる。

ゴゼンタチバナは花が終わっている。



大きなザックを担いだ男性が追い抜いていく。

マイヅルソウももう実になっている。



6番 8時34分 2時間で丁度半分位かな?

此所でお腹がすいていることに気がつき朝ご飯のおにぎりを食べる。

大きな梅干しが美味しい。



手早くおにぎりを食べて出発。

標高が上がってきたのでゴゼンタチバナの花が残っている。



イチヤクソウも沢山咲いているが気温が上がってきて喉がやけに渇く。



コオニユリやヤマハハコも綺麗だ。



右に不動岳や船窪岳が見えるようになる。



あれっ ギンリョウソウが咲いている。

5番に着いた。

また此所でも座り込む。



日本庭園のような美しい登山道が続く。



三角点(2208.5m)小屋ノ沢に着く。

9時43分

後、小屋まで標高差300mなので一時間もせずに着くことが出来るだろう。



常駐巡視員だという方から予定を聞かれる。

今日は烏帽子小屋で水晶小屋、双六小屋、新穗高温泉だと答える。

頑張れば今日野口五郎小屋に行けますかと聞くと、三ッ岳の登りがちょっとキツいけど十分行けるでしょうとのこと。

アカモノが咲いている横でちょっと休憩。



標高が上がるとゴゼンタチバナの花が綺麗に咲いている。

ブナがなくなりダケカンバの林となる。



南沢乗越の白い崩壊地がクッキリと見える。

眼下に青い高瀬ダムが大きく見える。



丸太の階段も設置されている。

大きな花崗岩の岩が多くなりタヌキ岩を過ぎる。



ダケカンバの緑が綺麗だ。

南沢岳、不動岳、七倉岳が直ぐ近くに見えるようになる。



3番通過

右下は崩壊地が鋭く切れ落ちている。



ダケカンバの緑が益々美しい。

2番通過。

家内のペースが落ちてきて、千葉の夫婦が追い抜いていく。

時計を見ると10時43分になっている。

これでは今日中に野口五郎小屋は無理だなあとまた休憩する。

口が渇いて喉の奥が熱い。

唇の周りに唾が泡の塊のように付いている。

気温がドンドン上がってきているようだ。



コイワカガミもまだ咲き残っている。

ミネカエデの花も咲いている。



ミツバオウレンやツマトリソウの花も多くなる。

花の撮影に忙しくて益々足取りが遅くなる。



岩が多くなると1番。

小屋までもう少し。

随分とペースが遅くなってしまった。

今日は野口五郎小屋は無理だな

数年前までは、何時も予定より先に進むことが出来たのに体力が落ちたなあ。



左に三ツ岳が見えてくる。

エゾシオガマが群生するようになる。



カラマツソウやクロトウヒレンの蕾も多くなる。



キヌガサソウは花の盛りが過ぎてきているようだ。

南沢岳の方に雲がわいてきた。

先ほどの巡視員が今日は気温が高いので積乱雲が発達しそうだと言っていた。

雷が怖い。



ミヤマキンバイやベニバナイチゴの花も久しぶりの出会い。



ヒメイチゲの花も多いが珍しいなあ。

前烏帽子の岩峰がまだ遠くに見える。

1番からが随分遠く感じる。



白いウラジロナナカマドの花や黄色のミヤマキンパイの花がこれでもかと咲いている。



アオのツガザクラやコイワカガミも多くてつい足を止めてしまう。



ニガナ?とウサギギクも出迎えてくれた。



烏帽子岳への分岐を過ぎるとチシマギキョウが花の盛り



視界が開けると目の前に赤牛岳とその向こうに薬師岳。



赤牛岳の左手前に見えているのは三ッ岳かな。



11時36分 烏帽子小屋着。

高瀬ダムから5時間25分。

ブナ立て尾根登山口からは5時間3分

三角点から標高差300m程を2時間足らず掛かった。

最後、暑さにバテてしまったなあ。

エントツ山さんのレポートより1時間位遅いが、まあ標準コースタイムくらいだ。

病み上がりにしては上出来かな。

とりあえずチェックインする。

部屋に案内されると10人部屋に私達だけ。

これから皆さん到着するのかな?

少し横になって休憩。



余り遅くなってもいけないのでサブザックに、1㍑200円で買った水を入れて烏帽子岳に向かう。

目の前には前烏帽子岳の岩峰が見える。

12時14分出発。



燕岳と雰囲気がよく似ている花崗岩と砂礫の道を進む。

白いイワツメグサとブルーのチシマギキョウが美しい。



砂礫にはコマクサが群生している。



青いハイマツと白い花崗岩の砂礫のコントランスも燕岳に似ている。



コケモモの淡いピンクが可愛い。

ハクサンシャクナゲもハイマツの間に沢山咲いている。



ミヤマコゴメグサは小粋な花だ。

白いのはブルーべ゛りーの花かな?



花崗岩の岩塊が多くなるが燕岳のイルカ岩や眼鏡岩のような特徴ある姿はしていない。



ハクサンシャクナゲはピンクの色が濃い花もある。

前烏帽子は直ぐ近くだと聞いていたが結構遠い。



唐沢岳と不動岳の間に高瀬ダムと更に奥には七倉ダム

更に遠くには大町が見える。



花崗岩の大岩の間を歩くようになるとチシマギキョウが多くなる。



前烏帽子岳標高2,605mの頂上には剱を祀った祠がある。



目の前に烏帽子岳から南沢岳、不動岳、七倉岳の蓮華岳へと続く山並みが続く。

針木岳や蓮華岳の頂上には雲が覆っている。



左を見ると赤牛岳の向こうに薬師岳の三つのカールが見えるようになった。



キバナノコマノツメやタカネツメクサが岩にしがみつくように咲いている。



ミヤマダイコンソウやイワツメクサも岩の間に咲き乱れている。

花を見ていると中々足が進まない。



南沢岳の分岐に着く。

12時57分

烏帽子小屋から40分もかかっている。



いよいよ烏帽子岳が近くなった。

凄い岩山の様に見えて、登ることが出来るのかなあと不安がよぎる。



岩山の右に登山道が上がっていく。

不動岳の向こうに、針木岳と蓮華岳がクッキリと見えるようになった。



四十八池の一部も見ることが出来る。

千葉のご夫婦がもう下りてこられた。

足かがり手がかりが確りしていて楽勝だったと言っておられた。



岩峰の右に向かって登ると眼下に高瀬ダム。

途中から岩峰の下部を左に巻いていく。

いよいよ垂直に近い岩にとりつく。

窪みが掘ってある所に向かうが、家内は窪みのピッチが大きくて足が届かないという。

花崗岩なので滑らないからそのまま登るように言うが、家内はギブアップ。

右の鎖のある所に行く為に一旦下るが難儀していた。

鎖場から登ると、あっけなく簡単に登ることが出来た。



鎖のある横ばいは足場が広く何の問題も無い。

窪みのある岩を登る。



足場の窪みを利用すると頂上部には簡単に登ることが出来る。

しかし、頂上部の岩の上には高所恐怖症の二人は登ることは出来ない。

岩の間の狭い所で周りの眺望を楽しむ。

13時42分着。

山野草や景色を楽しんだ所為か小屋から1時間半もかかっている。



頂上からは素晴らしい眺望

左端の水晶岳から赤牛岳、薬師岳そして立山の山々が続く。

こんな素晴らしい景色を二人だけでたっぷりと楽しむ。



男性が二人登ってきたので私達は下山。

眼下の池には雪が残っている。



四十八池に寄ってみようかと思うが今日はもう疲れた。

小屋に帰ることにする。



赤くて小さいリンネソウが沢山咲いている。

四国では見ることが出来ない花だ。

下向きに咲く花が、なんともしおらしい感じ。

タカネナナカマドも沢山花を付けている。



水晶岳や三つ岳などの景色を楽しみながら小屋に引き返す。

前烏帽子岳までの登り返しが結構足に応える。



チシマギキョウのブルーが鮮やかで印象的だ。

イワウメが少しばかりだが咲いていて家内は大喜び。



前烏帽子岳頂上から烏帽子岳方向を振り返る。



男性がやってきて、「烏帽子岳はまだ遠いね」と言って祠の写真を撮っていた。

前烏帽子の下りからは大天井岳や燕岳が見えている。

烏帽子小屋が小さく見える。



明日歩く予定の三ツ岳から野口五郎岳そして水晶岳への山並みが美しく見える。

青い屋根の烏帽子小屋も小さく見えている。



ウラシマツツジはまだ緑だが秋になると見事に紅葉する。

柔らかくてビロードのような艶のある葉は美しい。



コマクサとリンネソウを目に焼き付けておく。



エンレイソウは実になっていた



アオノツガザクラとユキザサも沢山咲いていて撮影に忙しい。



15時29分 烏帽子小屋に帰ってくるとイワアカバナが咲いていた。

四十八池にも寄らなかったのに烏帽子岳への往復に3時間15分も掛かった。

景色や山野草に見とれて随分と立ち止まったからなあ。



気温は20度

標高2520mの夕方でこの温度とは。

今日は暑さがかなり応えた。

明日からも天気は良さそうなので暑い日が続くだろう。

朝、体調不良だと言っていた男性が到着した。

ブナ立て尾根に6時間半もかかり、それから烏帽子岳に行って帰ってきたらしい。

体調不良にかかわらず頑張ったようだ。

お疲れ様です。

「明日は不要な荷物を烏帽子小屋に預かってもらって軽くして水晶小屋」に向かいたいと言っていた。



5時から夕飯。

スープがとても美味しかった。

食堂では20人も居なくてガラガラだった。



小屋では賞味期間切れが近いビールを300円で販売していた。

よく冷えていて疲れが吹き飛ぶ。

庭のベンチでチシマギキョウを楽しみながら、一本目は一気に、二本目はゆっくり味わって飲む。

今日、三俣山荘から12時間も掛けてやってきた若いご夫婦や笠ヶ岳から縦走してきた男性の色々な話をお聞きする。

皆さん、公共交通機関でやってきて縦走をされているようだ。

私達も東京時代は公共機関を利用した山歩きをしていたが、ルートを自由に取れるので意外と便利だった。

若いご夫婦は大阪から来られたそうで四国の山も随分と登って居るようだった。



夕暮れが近づくとコマクサが紅に染まってきた。

白いコマクサも数株あって綺麗だ。

女性が二人、立ち入り禁止の看板を無視して近づいて撮影しようとして叱られていた。

叱った男性が立ち去ってからまた立ち入り禁止の所に入りたがっていたが私達が見ているので諦めた。

山では山野草を撮影するのに高倍率の望遠のカメラが必要だ。

私は最近アルプスではオリンパスの24.5倍の高倍率のカメラを使用している。

花に近づかなくても大きく写すことが出来るのでこのような時に便利だ。



寒くなってきたのでダウンを着て日が沈むのを眺めていた。

待っていると中々日が落ちないが贅沢な時間を過ごすことが出来た。

19時を過ぎるとやっと空が紅に染まってきた。

家内と二人で飽きもせずに眺めている。


熱心に写真を写している男性が、立山の左の低くなった向こうに尖りの綺麗な山が見えるでしょうと話しかけてくる。

鍬崎山2090mで富山では一番県民に愛されている山だと言う。

サラサラ越えで有名な、佐々成政が数百万両もの軍用金を埋めた伝承のある山だとか。

昨年歩いた針ノ木峠が思い出される。


部屋に帰ると先ほど前烏帽子岳でお会いした男性が同室だった。

今日は、広い10人用の部屋に三人だけ。

顔が日焼けでヒリヒリする。

20時の消灯と同時に熟睡することが出来た。

今日は時間的には予定をオーバーしたが、体力的にはそうキツクはなかった。

途中で休みすぎたのが失敗だったかな?

明日は、厳しい登りもないし快適な稜線歩きを楽しむことが出来るだろう。

楽しみだ。





総歩行距離 7.2㎞

累計標高差 +1,682m
         - 421m 

総歩行数 16,719歩


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